第7回スマートミール認証審査(2023年度)より,「『スマートミール』の基準」の一部を変更いたします。
これは,日本食品標準成分表の5年ぶりの全面改訂を受けての変更です。
今回の日本食品標準成分表の改訂では,エネルギー値の算出方法が変わったために,従来法よりエネルギー値は低くなることがすでに確認されています1)。
コンソーシアムでは,「日本食品標準成分表2015年版(七訂)(以下,七訂)」から,「日本食品標準成分表2020年版(八訂)(以下,八訂)」への移行によって,これまで認証された献立のエネルギー値が計算上どのくらい変化するかを検証いたしました。
その結果,八訂で栄養計算を行う際の「しっかり」のエネルギー量の基準(下限)を次のように変更します。(第7回認証および2023年度更新より)
「ちゃんと」 450 kcal~650 kcal未満(変更なし)
「しっかり」 650 kcal~850 kcal(現行)
→ 620 kcal~850 kcal(八訂の場合)七訂の場合は、従来どおり650kcal~850kcalになります。
1) 松本万里ら(2020), 食品のエネルギー値の算出方法についての検討:組成に基づく方法と従来法との比較. 日本栄養・食糧学会誌, 73, 255-64.
検証内容の詳細及び新基準の根拠について
日本食品標準成分表が七訂から八訂に移行したことを受け,給食部門で既に「スマートミール」認証を受けた事業所の献立(208種類)を七訂,八訂それぞれで再計算しました。その結果,八訂によるエネルギー量は,七訂による値に比べて約5%減少しました(図1)。食事を提供する対象者(利用者)の栄養状態が同じで,適切な食事が提供されていると判断される場合,計算上の減少分を献立の食材の追加や使用量の増加で調整することは適切ではありません。そこで,「『スマートミール』の基準」を見直すこととしました。
上記の208献立の再計算の結果,七訂計算で「ちゃんと」の献立は八訂計算でも全て「ちゃんと」の基準に当てはまりました。「しっかり」の献立については,エネルギー量が下がって「ちゃんと」の範囲に変わり,食塩相当量は「しっかり」の範囲に残る献立が約8%ありました。
そこで,「しっかり」のエネルギー量の基準について検討しました。
七訂,八訂によるエネルギー量の関係は,図2の回帰直線と回帰式(エネルギー量(八訂)=1.088+0.951×エネルギー量(七訂))で表すことができます。この回帰式に当てはめると,「しっかり」のエネルギー量の下限である650 kcal(七訂)は,620kcal(八訂)になります。一方,「しっかり」の対象は「一般男性や身体活動量の高い女性」であることを考慮し,「しっかり」の上限は850 kcalに据え置くこととしました。
以上のことから,第7回認証および2023年度更新より,八訂で栄養計算を行う場合,「しっかり」の下限を「620 kcal」に変更します。
変更後のエネルギー量の基準は,「しっかり」: 620 kcal~850 kcalとなります。「ちゃんと」は450 kcal~650 kcal未満のまま変更はありません。
いいえ。七訂で計算する場合の基準は,従来通り650kcal~850kcalとなります。八訂が公表されて一定期間経っていますので,八訂での計算値に基づき基準の見直しを行いました。
なお,計算値ではなく,分析値を用いる場合,食品表示基準の分析方法に合わせ,七訂の基準(「しっかり」650~680kcal)を用いてください。
食事を提供する対象(集団)に適した方で設定・申請してください。
・対象が主に一般女性(集団)であれば「ちゃんと」(食塩相当量3.0 g未満)
・主に男性や身体活動量の高い女性、若年層の一般女性(集団)であれば「しっかり」(食塩相当量3.5 g未満)となります。
「しっかり」で申請の場合,620 kcal~650 kcal未満の範囲にある献立では,食塩相当量2.5 g未満となります。650 kcal~850 kcalの献立ではこれまで通り食塩相当量3.0 g未満が該当します
なお,「ちゃんと」(450 kcal~650 kcal未満)で申請の場合は,これまで通り,食塩相当量2.5 g未満の献立が該当します。
現状の八訂に掲載されている食品のエネルギー値については,新しい算出方法による値と従来法による値が混在しています。新しい算出方法による値が大部分を占めるまでは,「ちゃんと」のエネルギー量の上限は650 kcalに据え置きます
ただし,今回の分析からも明らかなように,新しい算出方法によるエネルギー値は七訂よりも低下することが予想されます。したがって,八訂で栄養計算する場合は,2年毎の更新を視野におくと,620 kcalを上限として献立を考案されることをお勧めします。
今回は献立の計算上での検討しかできていないため、最低限の変更としました。
現在のエネルギー必要量の考え方は、BMIや体重、およびそれらの変化によって適切なエネルギー摂取量を判断するものです。
今回のスマートミールの基準の変更の適否も含め、引き続き検証を行ってまいります。
また、食事摂取基準や食品成分表の改訂の動向も確認しながら検討いたします。